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変形性膝関節症と ACP PRP療法による治療~患者様の血液を利用した再生医療~

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症は、膝のクッションとして働いている軟骨が加齢にともないすり減り、炎症が起きたり関節が変形したりして痛みや腫れを生じる病気です。

外傷や感染等明らかな原因があって発症する場合もありますが、多くは加齢を主な原因として、肥満や使いすぎ、遺伝的な背景等複数の原因が積み重なって発症します。

 

【病気の進行過程】病気の進行とともに軟骨がすり減り、関節の組織全体が変性していきます。

 

 

■ これまでの一般的な治療方法

 

変形性膝関節症の新たな治療選択肢

■ 患者様の血液を利用した再生医療

なかなか改善しないひざの痛みで日常活動が制限されると、筋力が衰え、病気の進行は早まってしまいます。
症状が進行し、関節の機能が失われると、手術以外では症状を抑えることが難しくなってしまいます。

PRP(多血小板血漿)療法患者様の血液を利用した再生医療です。
なかなか改善しない膝の痛みのある患者様の関節の炎症を鎮め、痛みや腫れを抑え、関節破壊の進行をくい止めることが期待されています。


患者様の血液には成長因子等の良いタンパク質、炎症や軟骨破壊を促進する悪いタンパク質が一緒に含まれています。
PRP療法では、成長因子を多く含む血小板と細胞の栄養素等を含む血漿を悪いタンパク質※1を含む赤血球から分離
することで血液のもつ治癒作用を高めて治療に利用されます。

 

※1 マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、IL-8等を指します。MIF、IL-8は血液中で赤血球に高濃度に含まれており、赤血球から遊離すると強い炎症反応を引き起こします。

 

ACP PRP療法とは?〔炎症抑制と軟骨保護作用を高めたPRP〕

ACP※1とはPRPの一種で、炎症抑制作用の邪魔になる赤血球と一部の白血球※2を約99%分離し、炎症抑制と軟骨保護作用を高めた黄色い液体です。赤血球と白血球がほとんど含まれないため、“Pure-PRP”とも言われます。
血液中の良いタンパク質をバランスよく濃縮し、注入することで、関節内の細胞が病的な炎症を引き起こす仕組み(NF-κBシグナル伝達経路)を抑制し、炎症を改善、痛みの緩和、軟骨破壊抑止を行うことが期待されています。
ACP PRP療法は欧州で既に治療法として承認されています。
また、欧米では既に複数の機関で客観性の高い臨床試験が行われ、その結果が国際的に権威のある学術雑誌に報告され、有効性の確認が進んでいます。

※1 ACPはAutologous Conditioned Plasmaの略称で、日本語で自家調整血漿といいます。
※2 好中球を指します。細菌感染に対する生体防御機能を持ちますが、炎症や軟骨破壊を引き起こし組織を障害します。通常はこうした作用は生体内では制御されていますが、慢性炎症性疾患では過剰な働きを示すことが知られています。

ACP PRP療法の治療の流れと作用

短時間で負担の少ない治療

1. 診察
現在の症状、過去の治療歴を伺います。
■ 必要に応じてMRIやレントゲン、血液検査 を行う場合があります。
■ 治療の適応があると判断した場合、治療の注意点をご説明します。
■ 患者さんが普段服用している薬には血小板の機能を阻害するものが含まれていることがあります。服用中の薬がある場合には診察中に相談ください。


2. 採血・治療
採血を行い、PRPの調整の間お待ちいただきます。
調整完了後、関節内にPRPを注射します。
■ 病気やケガの状態や場所により、目的とするPRPの濃度を変更するため、
採血量を調整します。
■ 治療後は10分程度安静にしていただき、問題なければそのまま歩いて
帰宅いただけます

 

治療は3つのステップで行われ、採血から治療提供までわずか15分程度※でおこなわれます。少量(15ml)の採血で治療を受けることができる負担の少ない治療です。

 【STEP1 】患者様の腕から少量採血(15ml)します

【STEP2 】血液を遠心分離し、赤血球と白血球からPRPを分離、抽出します

【STEP3】 PRPを患部に注射します ※全3 STEPで15分程度

【作用 】細胞が病的な炎症を引き起こす仕組み( NF-κBシグナル伝達経路)を抑制し、効果を発揮すると考えられています。

 

✖ 変形性関節症では病的な炎症のサイクルが発生 ✖

変形性膝関節症では病的な炎症を引き起こす仕組みが活性化しており、
炎症と軟骨破壊のサイクルが起きています。

 

 

◎ ACP PRPは病的な細胞活動を正常化し、関節環境を改善する ◎

ACP PRPは細胞が病的な炎症を引き起こす仕組み(NF-κBシグナル伝達経路)を抑制することにより、炎症を改善、痛みを緩和し、軟骨の保護を行うものと考えられています。

治療後の注意点・安全性

治療後の注意点
■ 治療当日は入浴は控え、シャワー浴にしてください。翌日から入浴可能です。
■ 治療後24時間以降、治療部位に腫れ等がなければ運動可能です。
■ 痛みで体を動かしていない期間が長い場合、関節の周りの筋肉は落ちているため、
急に激しい運動をするとケガの原因になります。
ウォーキングなど軽い運動から再開します。


安全性
PRP療法は、関節内の感染、血栓、敗血症、アレルギー反応、関節内出血が可能性としては考えられますが、ヒアルロン酸や生理食塩水の投与と比べても、有害事象のリスクは上昇しないという調査報告があります。3 また、調整方法によってはPRP注射を行った部位に反応性の炎症が生じる場合があります。

 

よくある質問

 

Q1:ACP PRP療法による痛みの改善効果はどのくらい続きますか?
欧米の臨床試験では3回の治療で1年程度痛みの改善が持続されたことが報告されています。

 

Q2:ACP PRP療法は安全ですか?
患者様自身の血液を利用しており、負担の少ない治療です。ACP PRPは炎症に関連する成分を少なく調整しているため、炎症反応は比較的穏やかです。


Q3:効果はいつから現れますか?
個人差はありますが、多くの患者様は注射後1週間~2週間程度で効果が実感されます。


Q4:治療後は普段通り過ごしてよいのでしょうか?
治療後も日常的な活動が可能です。
ただし、治療後24時間は治療した関節を使った活発な活動は控えていただくことが推奨されています。


Q5:治療に年齢制限はありますか?
当院では16歳以上で対象疾患を有する方が治療を受けることができます。
身体への負担が少ない治療なので、若年者~高齢者まで年齢に関わりなく治療を受けることができます。
ただし、重症の患者様の場合は手術が適している場合がありますので、主治医とよく相談することが大切です。

 

Q6:PRP療法は治療回数の制限がありますか?
PRP療法によるくり返しの治療は問題ないとされています。
ご希望によって、投与頻度や間隔は調整可能です。

 


Q7:PRPの効果を持続させるためにできることはありますか?
関節の痛みがなくなったら、運動療法を併せて行うことでより長期の症状緩和が期待できます。また、肥満気味の患者さんは体重を減少させ関節にかかる負担を減らすことで効果の持続が期待できます。

 

参考文献

1. Isabel Andia et al: Platelet-rich plasma for managing pain and inflammation in osteoarthritis. Nature
Reviews Rheumatology volume 9, pages721– 730 (2013)
2. Hillary J. Braun et al: The Effect of Platelet-Rich Plasma Formulations and Blood Products on Human
Synoviocytes Implications for Intra-articular Injury and Therapy. The American Journal of Sports Medicine.
2014; Vol. 42, No. 5
3. Jia Zhu Tang et al: Platelet-rich plasma versus hyaluronic acid in the treatment of knee osteoarthritis: a
meta-analysis. J Orthop Surg Res. 2020 Sep 11;15(1):403
4. Jun-Ho Kim et al: Adverse Reactions and Clinical Outcomes for Leukocyte-Poor Versus Leukocyte- Rich
Platelet-Rich Plasma in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. Orthop J Sports Med.
2021 Jun 30;9(6):23259671211011948.
5. Edward S Mojica et al: Estimated Time to Maximum Medical Improvement of Intra-articular Injections in the
Treatment of Knee Osteoarthritis-A Systematic Review. Arthroscopy. 2022 Mar;38(3):980- 988.e4

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